不動産の売買や会社設立などの場面では、不動産登記や商業登記の添付書類として「印鑑証明書」が必要になるケースが多く見られます。印鑑証明書は、市区町村に印鑑登録をすることで交付を受けられる重要な公的書類です。
この点、外国籍の方でも印鑑登録を行うことはできるのでしょうか?
今回は、外国人が日本で印鑑登録をするための要件について、司法書士の視点からわかりやすく解説いたします。
印鑑登録制度の基礎知識
印鑑証明書を取得するには、まず市区町村に対して印鑑の登録を行う必要があります。
我が国において「印章(いわゆるハンコ)」が非常に重要な役割を果たしていますが、実は印鑑登録制度自体は法律によって定められているわけではありません。
各自治体が定める「印鑑条例」によって運用されています。
この条例は、総務省の通知(印鑑登録証明事務処理要領)に基づいて作成されているため、全国的に大きな違いはありませんが、実際の取り扱いは自治体ごとに多少の違いがあります。
そのため、登録を希望する方は、ご自身の居住地の条例を確認しておくことを推奨します。
ここでは、東京都千代田区の印鑑条例を例に、登録資格について見ていきましょう。
千代田区印鑑条例にみる登録資格
【千代田区印鑑条例 第3条 抜粋】
印鑑の登録を受けることができるのは、住民基本台帳に記載されている者とする。
ただし、以下のいずれかに該当する者は登録できない。
(1)15歳未満の者
(2)意思能力を有しない者(1を除く)
このように、「住民基本台帳に記載されている15歳以上の方」であれば、印鑑登録が可能とされています。
外国人も住民登録できる?
かつては「外国人登録法」によって、外国籍の方の登録は別制度で管理されていましたが、2012年7月9日の法改正により「外国人登録法」は廃止され、外国人に対しても「住民基本台帳法」が適用されるようになりました。
これにより、一定の条件を満たす外国人の方も、日本人と同様に住民票の作成・住民登録が可能となっています。
外国人が住民登録できる条件
2025年2月現在、以下の外国人が住民登録の対象となっています。
- 中長期在留者:在留資格を持ち、在留期間が3か月を超える方
- 特別永住者:特別永住者証明書を持つ方
- 一時庇護許可者・仮滞在許可者:難民申請等で仮の滞在が認められている方
- 出生・国籍喪失による経過滞在者:60日以内の経過滞在後、30日以内に在留資格取得申請をする方
※一方で、短期滞在者や在留資格を持たない方は住民登録の対象外となっています。
司法書士からのアドバイス
以上のように、外国人であっても、住民登録をしていれば印鑑登録が可能です。日本国内で不動産取引や会社設立等を予定している外国人の方にとって、印鑑登録は大切なステップですので、事前に住民登録の有無をしっかり確認しておきましょう。
外国籍の方が日本で契約行為を行うには、印鑑登録を含む各種手続きへの理解が欠かせません。書類の取得や申請に不安がある方は、是非弊所までお気軽にご相談ください。
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