近年、資産の保有・運用を目的としたプライベートカンパニー、いわゆる「資産管理会社」の設立が注目を集めています。
本稿では、司法書士の視点から、種類株式を活用した資産管理会社における相続対策について解説します。
資産管理会社とは
資産管理会社とは、主に不動産、株式、預金などの資産を保有・管理・運用することを目的とした会社です。個人ではなく会社として資産を所有・運用することで、税務上のメリットや相続対策、リスクの分散などが期待できます。
資産管理会社を設立するメリットそしては以下のようなものがあります。
相続・贈与対策:資産を法人に移すことで、個人で所有するよりも税負担を軽減できる場合があります。
節税:法人税の活用や損益通算など、個人より柔軟な税務処理が可能。
不動産管理:賃貸物件を法人名義にして、経費処理をしやすくする。
事業承継:株式や不動産などを法人で保有することで、後継者へのスムーズな引き継ぎが可能になる。
種類株式を使った相続対策のスキーム
資産管理会社の相続対策として、種類株式(※特定の権利に制限や優遇を設けた株式)を活用するスキームが、実務上広く用いられています。
資産管理会社の設立の際、以下のような対策をすることにより、次世代へのスムーズな資産管理会社の相続を行うことができます。
- 親が100%出資で資産管理会社を設立
- 親が保有する株式の一部を「議決権制限株式」として発行
- その種類株式を子へ贈与または売却
- 子は配当を受け取ることができ、資産を徐々に承継
- 将来、種類株式を普通株式に転換、または取得条項により取得
このようにすることで、親が議決権を持ち続けて経営権を保持しながら、資産の移転を段階的に進めることが可能です。
スキームの補強:遺言書の活用
上記の方法により、生前のうちに子世代へ資産管理会社の株式を承継することができますが、親が死亡した場合、保有していた普通株式は原則として配偶者と子に法定相続されます。
仮に、「すべての株式を子に相続させたい」といった意向がある場合には、その旨を明記した遺言書の作成が有効です。
将来的なトラブルを未然に防ぐためにも、株式以外の資産の分配方法も含めて記載し、公正証書遺言の形式で作成することを推奨します。
司法書士からのアドバイス
種類株式を用いた相続対策は、資産管理会社の設立段階から導入することで、最も大きな効果を発揮します。
本稿でご紹介したスキーム以外にも、お客様のご事情やご希望に応じて、さまざまな設計が可能です。
資産管理会社の設立や相続対策をご検討中の方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。
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